インドネシア人のコーヒーとの関わり方

人口の80%以上がイスラム教徒のインドネシアでは、アルコールを飲まない代わりにコーヒーを飲む機会が多くあります。家庭では老若男女問わずコーヒーが親しまれていますが、数年前からジャカルタなどの都市部では若者を中心にいわゆる「カフェ」がブームになっていて、今や若者のライフスタイルの一部になっています。そのため、インドネシア国内には多くのカフェが存在しており、2020年までインドネシア国内のカフェの数は3,000店舗を超えています。今回は、インドネシア人のコーヒーとの関わり方についてご紹介します。

◯インドネシア国内のコーヒー消費量

 インドネシア国内のコーヒー消費量は年々増加しており、今では世界平均を上回るほどの成長を続けています。かつてはワルンという昔ながらの食堂でコーヒーを飲むことが一般的でしたが、最近は都市部の若者の間でコーヒーチェーン店で飲む機会が増えています。

 しかし、インドネシア人一人当たりのコーヒー消費量は、2018年には2002年と比べて約30%減少しています。この期間はインドネシアの経済成長目覚ましいタイミングであり、かつての生活様式に変化が起こったのではないかと想像します。一方で、近年インドネシアの家庭ではインスタントコーヒーが普及してきています。

◯インドネシアのコーヒー文化

 一般的なインドネシアの家庭では、ドリップコーヒーではなく粉末状のコーヒーが飲まれています。粉末といっても飲み方の違いで2種類あります。湯を注ぐだけですぐに飲めるお手軽なミルクと砂糖が添加されたインスタントコーヒーと、一見インスタントコーヒーに見える細かな粉状のレギュラーコーヒーがあります。

    ・インスタントコーヒー(3in1/2in1タイプ)

    3in1は「コーヒー&ミルク&砂糖」、2in1は「コーヒー&ミルク/砂糖」が添加されたインスタントコーヒーでお湯を注ぐだけでそのまま飲むことができます。キャンディで有名なKOPIKOブランドなどが一般的です。ただし、ABC製のインスタントコーヒーだけは本当のコーヒーの粉も入っているので、沈むのを待って飲む必要があるので注意が必要です。

    ・レギュラーコーヒー(沈殿コーヒー)

    コーヒー豆をそのまま細かい粉末にしたレギュラーコーヒーです。粉がかなり細かいためフィルターの目に詰まりやすくドリップができません。この粉末をカップに入れてお湯を注いで粉末が沈殿するまで待ち、その上澄みを飲むというスタイルです。粉末が沈殿するまでにかなり時間がかかる上に、粉っぽさがあるため最初は驚かれるかもしれません。インドネシアでは古くからコーヒーはこうして飲んできたそうで、美味しく飲むには沸騰させた熱湯を注ぐことでコーヒー豆がしっかりと沈殿して粉っぽさを感じずに上澄みを飲むことができます。

 また、インドネシアには特有の社交スタイル「ngopi」(インドネシア後で「コーヒーを飲む」)という文化があります。「ngopi」とは、単にコーヒーを飲むだけでなく友人や家族と一緒に過ごす、という意味合いも含まれています。日本のような飲み会文化がないため、コーヒーを飲みながら語らう習慣はインドネシアの人々にとって大切な時間になっています。

 さらに最近では、カフェに「行く」こと自体を指したり、若者の間ではディスカッションする場をカジュアルに指す言葉としてを使ったりもします。そのため、カフェに行ってもコーヒーを飲まずにパンを食べたりコーヒー以外のものを飲んだりするだけの意味でも使われます。

◯インドネシアのカフェ事情

 冒頭でも述べましたが、近年はインドネシア国内でコーヒーブームが起こっていて、スターバックスのような大型店から地元の小さなお店まで、多くのカフェが見受けられるようになりました。コーヒー専門店であっても日本で一般的なブラジルやモカなどのコーヒー豆はほとんど見当たらず、置いてある豆のほとんどがインドネシア産です。

 ここではインドネシアで人気のある主なカフェチェーンをご紹介します。

①EXCELSO(エクセルソ)

1991年にオープンしたインドネシアで一番老舗のコーヒーチェーン店で、国内30都市に126店舗を展開しています。コーヒー豆、コーヒー粉も販売しており店舗だけでなくスーパーマーケットでも購入することができます。

②Kopi Kulo(コピクロ)

2017年にオープンして以来、2023年にはインドネシア国内で250店舗以上展開しています。こちらも

15,000〜27,000ルピア程度と安価でありながら洒落た容器デザインで若者に支持されています。

  • ③J.CO Donuts&coffee(ジェーコ)

ショッピングモールを中心に出店しているJ.COは、名前の通りドーナツとコーヒーを売りにしているカフェで、インドネシア国内だけでなく海外展開にも積極的で、シンガポール、フィリピン、マレーシア、香港、遠くはサウジアラビアなどにも出店しています。

④Kopi kenangan(コピクナンガン)

2017年に1億9,600万ドルの資金調達をして出発したスタートアップ企業です。多額の資金を背景に短期間でインドネシア各地に店舗を広げていて、2023年までに850店舗以上展開しています。コーヒーにタピオカやゼリーを入れるアレンジができることがウリで若者に人気があります。コーヒーの他にパンやハンバーガーなどのフードメニューも豊富な点が他のチェーンとの差別化になっています。

⑤Janji Jiwa(ジャンジジワ)

インドネシアで最大手のカフェチェーンで、2019年のオープン以来急拡大し、2023年にはインドネシア国内に900店舗以上展開しています。今ではインドネシアで一番の店舗数を誇ります。価格帯は15,000〜30,000ルピアと比較的安価なため、若者を中心に人気があります。

⑥TOMORO COFFEE(トモロ コーヒー)

ジャカルタに本社を置くカフェチェーンのスタートアップ企業です。わずか2年でインドネシア国内に600店舗を出店し、さらにシンガポール、フィリピン、中国にも展開しています。アプリによるオンライン注文・店舗受け取りサービスは使い勝手が良くユーザーから好評で登録者数は250万人を超えました。2024年中に1,000店舗達成を目指しています。

◯日本で飲めるインドネシア発祥のカフェ

(写真:OMOHARAREAL[オモハラリアル]

 「kopikalyan(コピカリアン)」は、ジャカルタに3店舗を展開するカフェチェーンです。「コピ」はインドネシア語の「コーヒー」、「カリアン」はサンスクリット語で「神の祝福を受けた」という意味で、インドネシア語の「kalian(あなたたち)」とも掛けた店名になっています。

 2020年12月には東京・原宿に海外1号店をオープンしました。店内はジャカルタの店と似た落ち着いた空間が広がります。店名を冠した看板メニューの「アイスコピカリアン」(650円)はインドネシアのパームシュガーを使ったオリジナリティのあるコーヒーです。

以前のブログでご紹介しましたが、インドネシアのコーヒー栽培は長い歴史があり、生産量も拡大し続けて今では世界第3位のコーヒー生産国です。インドネシア国内では近年の急速な経済発展も追い風になってカフェブームが起こっていますが、カフェチェーンが増える一方で全体として国内消費量は減少しています。裏を返すと、海外輸出量が増加していることの表れであり、今後は日本でもインドネシアコーヒーの需要が拡大する可能性を秘めています。最近では入手しやすくなったインドネシアのコーヒーに触れてみてはいかがでしょうか。

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