バニラビーンズの風味と香りはアイスクリームやクッキー、ケーキ、プリンなどのデザートに欠かせない存在です。前回のブログでバニラビーンズが食用として使えるようになるまでをご紹介しましたが、受粉作業、キュアリングといった手間のかかる作業を経て、あの濃厚で力強い香りが生まれます。一見したところ黒茶色の細長いビーンにしか見えませんが、その内側には魅惑的な香りと風味が秘められています。そして、その香りと風味だけでなく、健康面でもたくさんの利点があります。今回はバニラビーンズに秘められた身体や心に及ぼす作用や選び方をお伝えします。
◯バニラビーンズの効果・効能
バニラビーンズに含まれる香り成分やさまざまな抗酸化物質には多くの有益な効果・効能があります。よく知られているものは次の通りです。
①緊張の緩和
バニラの芳香成分のリナロールには神経系の過活動を抑制する鎮静効果があり、ストレス、イライラ、緊張、不眠などを緩和してくれるリラックス効果があります。リナロールはに抗感染効果もあると言われていて、感染症予防の効果も期待されます。
②抗酸化作用
バニラに含まれるビタミンB群やポリフェノールなどの抗酸化物質がが体内の活性酸素を抑制する役割を果たします。抗酸化作用により細胞の酸化ストレスが減少し、老化や慢性疾患の予防が期待できます。
③抗炎症作用
バニラに含まれるリナロールには抗炎症作用もあり免疫機能を向上させる効能に加えて、腸内のガス排出を促す働きがあります。さらに、バニラに含まれるフェランドレンには鎮咳効果や滋養強壮効果があります。
④消化促進とダイエット
バニラの香り成分『バニリン』には胃酸分泌を刺激する効果があり、効率的な消化が期待されます。またバニリンは、脂肪を蓄えている脂肪細胞に刺激を与えて、脂肪細胞が燃焼し小さくなることで体重が減少することが期待されます。さらに、バニラの香りをかぐと脳の満腹中枢が刺激され、食欲をコントロールする脳内ホルモン「セロトニン」の分泌を促します。
ほかにもバニラに含まれる芳香成分のフェランドレンには強壮効果があるとされています。バニラビーンズはかつてはイギリスやアメリカなどで医薬品として、抗酸化作用、抗発がん作用、抗うつ作用、解熱作用があるとされ使われていました。
こうした本来のバニラビーンズの風味や効果を引き出すためには適切な熟成が必要不可欠です。人工的なバニラエキスとは違う自然な風味や効果を引き出すためには、時間と手間をかけてゆっくりと熟成させることが重要です、時間と手間を惜しまず丁寧に作られたバニラビーンズを選ぶことで、その風味や効果を最大限に活用することができます。
◯バニラビーンズの選び方
日本で買える市販のバニラビーンズはたくさんありますが、マダガスカル、インドネシアのものが主流で、品種はほぼブルボン種(vanilla planifolia)になります。ブルボン種はタヒチ種(vanilla thahitensis)と比較してウッディでキャラメルの香りが強く、甘いフルーティーな香りもします。一方でタヒチ種はアニス系の少しスパイシーな香りがします。ただ、売られているバニラビーンズはガラス試験管か真空包装で販売されているため、直接香りを確認することが難しいのが実情です。そのため、見た目から良いバニラビンーズを選別することがとても重要です。
①長さ:長いもの(約17〜18 cmほど)が理想的です。なかでも鞘の直径が厚く、しっかりと種が詰まっているものが良いとされます。
②触感:見た目にふっくらとした柔らかなものを選びます。バニラビーンズの含水率は約24〜38%です。加工工程で乾燥しすぎたものは弾力性に欠け、香りが弱く、色が薄くなります。
③外観:表面に破裂や傷がなく、色は均一、光沢があり油分を含んだ外観が理想です。一見少し脂っこいように見えます。油分が十分にあるとカビを防ぐことができます。
④結晶:バニラビーンズの表面に浮かぶ白いものは芳香成分の主成分であるバニリンが結晶化したものです。カビのように見えますが、バニリンの量が多いときにバニラの表面に白い結晶として析出します。
バニラビーンズには規格団体はなく統一された規格がありませんが、長年の商取引の実績から一般的にAグレード、BグレードまたはTKバニラ、レッドバニラなどと分類されています。
・Aグレード:高品質とされ、香りが良く見た目も光沢があり、色が濃く潤いがあります。バニラビーンズの肉付きが良く、含水率が通常30%以上とされていてふっくらしていて柔らかいものを指します。風味を最大限に引き出したい場合、スイーツ等のデザートへの使用に最適とされます。
・Bグレード:鞘が細く乾燥しています。赤褐色に見え、あまり光沢がありません。含水率は通常約20%程と乾燥しているため曲げると割れる恐れがあります。
・TKバニラ:含水率が30%前後で、バニリンと水分の比率がバランスがよく、香りと風味が十分に発達しています。表面にオフホワイトや砂糖のようなバニリンの結晶が見られることもあります。
・レッドバニラ:含水率が22〜25%で、外観は表面が少し赤く見えますがTKバニラと比べても劣ることはなく、ただ乾燥しているだけです。香りを嗅ぐには近づかなければなりませんが、その味わいはTKバニラと同様に力強いものです。
TKバニラとレッドバニラは主に産業用の香料(エッセンス・エクストラクト)や食品会社などで抽出目的で使用されます。Aグレードのものと比べて色が赤や茶色に近く、水分が少ないのが特徴です。水分が少なく軽いため、オーブン調理やソース作り適しています。
そのほかにも「グルメ」「ベリードライ」「ショーツ」「スプリッツ」「カット」など、バニラビーンズの分類基準が使われています。
・グルメ:見た目は良いものの、含水率35~38%の品質が劣る豆です。一部の不正な業者がより多くの豆を販売してより高いマージンを得るために使用することがあります。ふっくらと柔らかそうに見えるように真空パックされます。香り自体はあるものの風味が十分に発揮されておらず、見た目は良いのですが品質を維持させるために真空状態で保存する必要があり、開封後は早々にカビが発生する危険性があります。
・ベリードライ:含水率15~20%程度でとてももろくて硬く縮んでいますが風味はあります。乾燥してしまっているので、香りは弱い場合が多いです。
・ショーツ:単に小さく育ったものに過ぎず、風味や個性に差はありません。長さが14cm以下で安価に販売されます。
・スプリッツ:太陽の光を浴びて自然に割れたり、収穫時や作業工程において手で割れたりしたもので、風味や個性に差はありません。 見た目が悪いため安価です。
・カット:外観や大きさ、形が不揃いで、雑にカットされていたり、小さくなっていたり、曲がっていたり、湾曲していたりするものです。これも最終的な風味や個性に違いはありません。見た目だけの理由で安くなっています。
バニラビーンズについて詳しく知るにつれて次々と新たな事実が見えてきます。今回は現時点で分かる範囲の情報をお伝えしました。今後もお付き合いいただいているインドネシアの農園の方々からの現地ならではの話をお伝えできればと思います。
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