バニラビーンズの利用方法と代用品など

バニラビーンズは栽培が難しいことはもちろん、キュアリングという熟成発酵プロセスが一番難しく、それら全てが揃って初めてバニラビーンズとしての価値が決まります。そして質の高いバニラビーンズを扱う際に手順に沿って正しく使うことで、その深い甘さと風味を最大限に引き出します。

このキュアリングという工程では、同じ作業を何日も繰り返して発酵を促し、ようやく乾燥工程に入ります。この工程が一番コストに影響しています。しかし、このキュアリングを短縮することも可能で、結果として薄茶色で水分量の多い、香りが少ないバニラビーンズになります。高価なバニラビーンズの代用品が存在する背景には、このようなバニラビーンズとして市場には出回らないものを使って製造されるものがほとんどです。その代わりバニラビーンズより安く、使いやすいというメリットがあり、ユーザーによっての使い分けが求められる部分です。

◯バニラビーンズ活用方法の変遷

 原産地の中央アメリカでは、アステカ族やトトナック族などの先住民族が宗教儀式やチョコレートドリンクの香り付けに使っていたと言われます。その後、16世紀にチョコレートや唐辛子、トマトなどと一緒にヨーロッパへ持ち込まれ、砂糖との組み合わせでアイスクリームやクリームブリュレなどバニラの活用方法が発明され需要は著しく高まりました。

 実はバニラビーンズは「さや」と「種」を含めたものの全体を指します。そして、正確には「バニラの豆」ではなく「バニラの果実」なのです。さやのなかの黒い粒はバニラの種子で「バニラシード」と呼ばれています。ここで多くの人が誤解しているのは、バニラビーンズの香りは黒い粒の方ではなく、実はさやの方に由来しているのです。香り成分が含まれているさやを素材と一緒に煮て活用しているのです。その自然な香りはバニラエッセンスやバニラオイルに使用されるエキスとは一線を画しています。

 ではバニラエッセンスとバニラオイルとはなんなのでしょうか。どちらも同じバニラの風味がありながら明確な違いがあります。バニラの香りの主成分を油に溶かしたものがバニラオイル、アルコールに溶かしたものがバニラエッセンスで、バニラオイルの方が香りが飛びにくい特徴があります。

◯様々あるバニラビーンズの代用品

 ここでバニラエッセンスやバニラオイルをはじめとする代用品についてご紹介します。

①バニラエッセンス

 バニラエッセンスには人工的に作られたものと天然のものの2種類があります。人工的なものは安価ですが香りは単調で加熱すると香りが飛んでしまいます。天然のものは値段が高いですが奥深い香りが長時間持続します。

 人工的なものとは、バニラビーンズの香りの主成分であるバニリンを合成した香料をアルコールで薄めたものです。バニラエッセンスはアルコールが蒸発することでバニラの香りを引き出しますので、アルコール特有の香りが残ることがあります。

 そしてやはりバニラビーンズと合成したバニリンとでは明確な違いがあります。それはバニラビーンズにはバニリン以外の複雑な香り成分が含まれているからです。比較するとはっきりと感じられますが、バニラエッセンスよりバニラビーンズの方が奥行きや立体感を感じる複雑な風味を感じられます。

 この合成バニリンは木材パルプ製造時の副産物であるリグニンからが作られており、合成する際には石油由来の材料が使われます。オーガニックが叫ばれる時代に石油由来の香料を食用にすることには疑問を感じます。一概に身体に悪いとは言えませんが、決して良いとは言えないでしょう。

 またバニラビーンズから抽出したバニラエッセンスは、抽出工程が必要な分割高になり、バニラエッセンスを使う最大のメリットであるコストの安さが消えてしまいます。

②バニラオイル

 バニラオイルはアルコールで抽出するバニラエッセンスと違い、バニラの香りを油によって抽出したものです。バニラビーンズを油に漬けて長時間低温で抽出することで、バニラの甘く香ばしい風味を最大限引きだして作られます。

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③バニラエクストラクト

 バニラエクストラクトはバニラビーンズをアルコールに浸して作った天然のバニラエキスです。バニラビーンズがアルコールに浸ると、バニリンというあのバニラ独特の香り成分が放出されます。

 バニラエッセンスと比較すると抽出していない分香りが弱く相当な量を使わないと同程度の香りにはなりませんが、バニラビーンズの香り全てが溶け出しているので複雑さや立体感はこちらのほうが確実にあります。

 しかし、バニラビーンズそのものを漬けて時間をかけて作っているためにバニラエッセンスとは比較にならない程高くなります。バニラビーンズも手軽に利用できる点がメリットになると思います。

④バニラペースト

 バニラペーストはバニラエクストラクトをもとに、「種」や砂糖などを加えてペースト状にしたものです。バニラエクストラクトと比べたメリットとしては、種が入っていることによる視覚的な部分になると思います。

 バニラビーンズの代用品をご紹介しましたが、合成香料のものを除いてバニラビーンズから作られています。それでもバニラビーンズより安いのは、バニラビーンズ単体で販売できないレベルのものを原料にしているから、と言えます。

◯バニラビーンズの保存方法について

 バニラビーンズの持つ芳醇な香りと新鮮さを維持するために適切な保存方法があります。最も重要な点は温度管理で、15~20℃で直射日光や高温を避けて冷暗所での保存をお勧めします。次に重要な点は湿度で、乾燥しないように密封容器などに入れて保存してください。もちろん湿度が高すぎるとカビが生じる可能性がありますのでご注意ください。気付きにくいポイントとしては、バニラビーンズの香りは結構強く他の食材と一緒に保存すると匂い移りするのでお気をつけください。

 以上の点に注意して保存すればバニラビーンズの香りは1~2年は続きます。また冷凍保存も可能で、バニラビーンズをラップで包んでからジッパー付きの袋に入れて冷凍庫で保存してください。使う際には自然に解凍してお使いください。使う直前までフレッシュさを保つことができます。

今回のブログでご紹介しましたバニラの香りを生むバニリンの合成は19世紀から研究が進められており、現在では工業的に合成することが可能となりました。市場で流通しているバニラ香料の99%は合成バニリンによるものと言われており、価格も天然バニラの10〜20分の1以下と安価ではあります。

幸せホルモンと言われるセロトニンを活性化してくれるバニラビーンズの香りは、心と身体をポジティブに導いてくれます。この自然な香りは、バニラエッセンスなどの代用品ではなくバニラビーンズでこそ実感できるはずです。

弊社ではインドネシアの良質なバニラビーンズを農家さんから仕入れています。そして日本への輸出に向けて準備を進めていますので、ご興味ありましたらご一報ください。日本での取り扱い店にはサンプルを用意していますので、実物をご確認いただけたらと思います。

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