インドネシアの特産品について(2)ローカルが愛するコーヒー文化

前回に続いて特産品の中からインドネシアのコーヒーに焦点を絞って、地元の人たちのコーヒーの楽しみ方のなかでコーヒー豆を買えるお店や街中のお勧めコーヒーショップ、日本では考えられないコーヒーの飲み方などをご紹介します。ジョコ前大統領が美味しさを認めたコーヒーもありました。

◯ローカル向けの市場にあるコーヒー豆販売店

 南ジャカルタにあるインドネシア在住の方にはお馴染みの市場「Santa Modern Market(サンタ・モダン・マーケット)」、通称「Pasar Santa(パサール・サンタ)」は、洋服や雑貨などの日用品から野菜、魚、肉などの食材が買えるローカル向けの市場です。日系企業の店舗が入っているショッピングモールとは趣が違い、いかにもインドネシアという雰囲気が漂います。

 そのなかに日本人をはじめ海外からの観光客も買いに来るという、インドネシア各地から取り寄せたさまざまなコーヒー豆が安価に買える人気店「Toko Dunia Kopi dan Plastik(トコ・ドゥニア・コピ・ダン・プラスティック)」、通称、Dunia Kopi(ドゥニア・コピ))があります。市場の建物の半地下にあり、お店で焙煎されたコーヒー豆がガラス瓶に入って量り売りされています。

 取り扱っているコーヒー豆はAche(アチェ)、Kopi Luwak (コピ・ルワク)、Mandheling(マンデリン))、Toraja(トラジャ)など50種類ほどあり、国産銘柄以外にも輸入品のBluemontain(ブルーマウンテン)なども取り揃えています。その場でコーヒー豆を挽いてくれますが、何も伝えないでいるとインドネシア式の沈殿式で飲む方式のとても細かい粉状に挽かれますので、コーヒー豆のまま購入することをお勧めします。豆のまま購入したい時は「biji(ビジ)」、粉末で購入したい時は「bubuk(ブブ)」と伝えれば良いですが、日本人客が多いからなのかなんと「マメ(豆)」、「コナ(粉)」で伝わります。ちなみに価格は挽いても挽かなくても同じ金額になっています。

 この店でよく売れている銘柄に西ジャワ産の「Puntang(プンタン)」があります。2016年にアメリカで開催された品評会で受賞して有名になったコーヒー豆で、以前ジョコ前大統領がバンドンを訪問した際に閣僚たちと寄ったカフェで提供された「Puntang」を飲んで気に入ったそうです。飲んだ人の話では、酸味や苦味などのバランスの取れた確かに美味しいコーヒーだそうです。

◯ジョコ前大統領が美味しいと言ったPuntangを提供した店「Sejiwa Coffee(セジワ・コーヒー)」

 ジョコ前大統領が「Puntang」を飲んだ店がバンドンの「Sejiwa Coffee」です。インドネシア語で「se」は接頭語で「1」「同じ」「全体」という意味で、「jiwa」は魂を意味します。

 以前はジョコ前大統領の像が置かれていましたが、最近改装されグレーを基調としたモノトーンでスタイリッシュな内装と最新のコーヒーマシンを備えた現代的なカフェになりました。1階は禁煙席で2階は喫煙席になっています。コーヒーだけでなくスイーツや本格的な食事まで提供しています。

◯ミルク入りアイスコーヒーブームの先駆け「Toko Kopi Tuku(トコ・コピ・トゥク)」

 ジャカルタ市内に数店舗ありますが、最も有名なのは南ジャカルタのCipte(チプテ)にある1号店です。この店もジョコ前大統領が家族で訪れたことで有名です。

 2015年頃から始まった「Es Kopi Susu(エス・コピ・スス=ミルク入りアイスコーヒー)」ブームの先駆けとなった店です。コーヒー豆はスマトラ、ジャワ、バリ産のブレンド、焙煎はやや苦めのミディアムダークロースト、そしてフレッシュミルクとクリーム、グラ・アレン(ヤシ砂糖)を加えます。コーヒーの苦みと砂糖の甘さが打ち消し合って甘過ぎず、少し酸味を感じる絶妙なバランスのアイスコーヒーになっています。たっぷり氷が入った「Es(エス=氷)」と「Panas(パナス=熱い、ホット)」があり、ジョコ前大統領が飲んだのは「パナス」だそうです。

 店一押しの「Es Kopi Susu Tetangga」(エス・コピ・スス・トゥタンガ=となりの冷たいミルクコーヒー)は日本円で1杯約230円です。このようなインドネシアの低価格カフェチェーンはコストを抑えるために基本的にテイクアウトで店内は狭く、Tukuもテイクアウトを待つための6人程度が腰かけられるベンチと店の外にテーブルが2つある程度です。

◯伝統的なインドネシアのコーヒーの飲み方の数々

 インドネシアのコーヒーの飲み方には日本では考えられないようなユニークな飲み方があります。

(1)Kopi Tubruk(コピ・タブルック)

 日本で一般的なドリップ式とは飲み方が全く違い、大きめのグラスに極細挽きのコーヒー粉と砂糖を入れたら、沸騰したお湯を注いでよくかき混ぜます。そして、コーヒー粉がカップの底に沈むのを待って飲みます。沸騰したお湯を注ぎコーヒー粉がカップの中を対流しながら沈殿するまでに早くて2、3分から5分程度かかります。急いで飲みたいならば、粉が沈み始めたところでコーヒーに息を吹きかけて粉を避けて飲み口を作りながら上澄みを飲みます。そして最も大事な点は飲み終わりの見極めです。決して最後まで飲み切ろうとはしないように!口の中に沈みきれていない細かなコーヒーの粉が入ってきて不快になることでしょう。ほどよく上澄みを頂いたところで飲み終わりとしてください。

(2)Kawa Daun(カワ・ダウン)

 コーヒーの葉を乾燥させてお茶のように飲む、スマトラ島西部特有の伝統的な飲み方です。この飲み方は、コーヒー豆が入手しにくい地域で発展したと言われています。乾燥させたコーヒーの葉を水から沸騰させて5分ほど煮立たせたあと、漉してから砂糖などを加えて飲みます。葉を乾かすプロセスの中に燻す過程があるためにスモーキーな味と香りがします。Kawa Daunはカフェインが少なくリラックス効果があるとされています。

(3)Kopi Jahe(コピ・ジャヘ)

 ジャワ島やスマトラ島などでよく飲まれています。 熱帯地方ではありますが、彼らは身体を冷やすことをとても嫌がり身体を内側から温める食材を好みます。この温かくて甘い生姜のコーヒーは寒い朝や夜に最適で、生姜の健康効果も期待できるため現地の人々に愛されています。Kopi Jaheはスライスした生姜をコーヒーに加えて煮出して作ります。コーヒーは生姜のスパイシーな風味と相性が良く、初めて飲む方でも違和感なく美味しく飲めると思います。

 以上お読みいただいたようにインドネシアのコーヒー文化は多様性に富んでいます。インドネシアに来られるときには、訪れる地域のコーヒー豆やその地域独自のコーヒーの飲み方を知っておくことで、よりコーヒーを楽しめると思います。

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