一般的にインドネシアは親日国だと言われています。実際にインドネシアを訪れ、現地のインドネシア人に接してみると、彼らがとても友好的であることに驚かれるでしょう。日本のどのような点が好まれているのでしょうか。現地で暮らしインドネシア人と接して感じられることをお伝えしたいと多います。
◯日本のイメージと「日本」ブランド
インドネシア人の日本に対するイメージは、次のようになると思います。
・四季があり、春夏秋冬それぞれの風景や文化を楽しめる
・街がきれい
・公共交通機関が定刻通りに動いている
・サービス、ホスピタリティが良い
・製品のクオリティが高い
インドネシア製品よりも海外製品を選ぼうと考える人はたくさんいます。海外製品を選ぶ主な理由としては、品質面、デザイン面、技術面などが挙げられます。なかでも日本製品は「高価」であるという印象もあるものの、それ以上に「品質の良さ」や「普及している」といったイメージを持たれていると思います。特に都市部を中心として浸透している日本食の味や、日本車・日本製家電・日本のファッションブランドの品質の高さがインドネシア人の信頼を勝ち取っていると言えます。
このように日本製品の品質の高さはよく知られているところですが、インドネシアでは大統領自らが国内製品の消費を呼びかけており、国内の技術力・生産力の発展のために輸入品よりも国内の製品を購入することが推奨されている現実があります。最近のインドネシア製品は高品質でデザインの優れたものが増えてきました。国際的に競争力のあるインドネシアブランドも出てきており、国内のファンを獲得しています。
◯日本人のイメージ
一方で、インドネシア人の日本人に対するイメージは、次のようになると思います。
・ルールやマナーを重んじる
・礼儀正しい
・きれい好き
・時間厳守
・働きすぎ
多くのインドネシア人が日本に対して持っているイメージは欧米などの各国と同じようなステレオタイプなものだと思います。彼らが自国にいながら実感を伴ったイメージを持っているのは日本製品の品質や技術力くらいなのではないでしょうか。
◯インドネシア人の対日感情
外務省による令和5年度(2023年度)「海外における対日世論調査」によると、「あなたの国の友邦として、今日の日本は信頼できると思いますか」という質問に対してインドネシア人回答者の60%が「とても信頼できる」と答えています。また、グローバルマーケティング事業を行うアウンコンサルティング株式会社が実施した2023年度の「世界12カ国の親日度調査」では、インドネシア人回答者の45.7%が「日本が大好き」、51.4%が「日本が好き」と回答し、さらに日本に「すごく行きたい」「行きたい」と答えた回答者は合計96.1%にものぼっています。
親日といわれることが多いですが、これらの調査結果からもインドネシアの人々が日本に対してポジティブな印象を持っていることがうかがえます。好きな理由としては、四季の風景や商品の品質、日本食、漫画・アニメなどさまざまな回答が挙げられています。
このように、インドネシア国内で日本、日本人に対するネガティブなイメージがなかなか出てこないという点が、インドネシアを親日国と感じる日本人が多い理由の1つかもしれません。
◯「親日」と言われるインドネシアと日本の歴史的関係
インドネシアの対日感情が親日になった理由にはインドネシアと日本の歴史的な関わりがあります。インドネシアが親日といわれる所以となった両国の歴史についてご紹介します。
1596年から1942年までの約350年オランダによる植民地支配下にあったインドネシアを解放したのが日本だという歴史があります。とはえい、第二次世界大戦中にインドネシアの豊富な天然資源を求めて日本軍がインドネシアへ侵攻してオランダ軍を破ったことで、日本も1945年の降伏までの間インドネシアを占領していました。
インドネシアで戦った日本兵の中には戦争後もインドネシアに残り、当時のスカルノ大統領からインドネシア国籍を与えられた人もいました。さらにはインドネシアのために戦ったことを認められ英雄墓地に埋葬された日本人の戦死者も大勢います。この出来事が一つのきっかけとなりインドネシア人の多くが親日派になったと言われています。
その後も日本はインドネシアのの経済発展を支援してきたことも理由の一つだと思います。農業や工業など幅広い分野でインドネシア人研修生を日本が受け入れてきました。そしてODA(政府開発援助)などを通してさまざまな形でインドネシアの経済発展を支援してきました。実際に1960年~2015年の期間、日本のODA受取国の第1位はインドネシアという事実があります。
日本の経済支援の例の1つが、スマトラ島の南北を結ぶスマトラ縦貫道路の整備です。全長2,500kmのうち、6割ほどを日本が整備しました。鉄道ではジャカルタMRTの建設、日本の母子健康手帳の紹介などを日本が支援してきました。直近では2023年岸田前首相政権下に、経済成長と気候変動対策を支援することを主な目的にで総額1,736億6,700万円を上限とする円借款貸付契約が結ばれるなど、支援はさまざまな分野、かたちで現在まで続いています。
一方で、1974年1月にインドネシアでマラリ事件と呼ばれる反日暴動が起こりました。スハルト政権へ不満を持つ国民たちによる「日本企業がインドネシア政府と癒着してインドネシアでビジネスを広げている」という主張が発端でした。マラリ事件以降、大きな反日暴動は今日まで起こっていません。しかし、50年前というそう古くない時代に日本に対して強い反感を持つ人がいたことは事実で、日本に対してマイナス感情を持つ人が現在も存在しているのもまた事実なのです。
◯外務省による「ASEAN諸国における対日世論調査」結果
外務省では「海外における対日世論調査は、海外における一般的な日本のイメージや、日本の外交政策に対する理解等について観測し、外交政策立案等の参考とすべく毎年度実施している。」として世論調査結果を公表しています。「日本に関する認識と関心分野」「対日信頼度及び日本との関係」「日本の国際的役割及びアジアの発展のための役割への評価」「日本の安全保障政策についての認識」「日本企業の進出」の全5項目全てでインドネシアが押し並べて高い評価となっています。ASEAN6カ国の調査結果は平成28年度から毎年行われて、令和5年度が最新となっています。
現在の日本とインドネシアとの関係は、反日暴動を克服し、新たな関係を築くために地道に努力し続けてきた日本人とインドネシア人の協働の積み重ねの上に成り立っています。今回ブログを書くにあたって両国の関係を考える時、この幾重にも積み重なった歴史の上にあぐらをかき、日々の活動の中で信頼関係を構築する努力を怠ってはいないだろうか、という自戒の念が湧いてきます。私たちはインドネシアが親日であることを求めるだけではなく、自分たちも親インドネシアであろうとすることが大切なんだと改めて実感します。これからの日本とインドネシアとの関係は、私たち自身のインドネシアとの関わり方如何にかかっていることを忘れてはならないと思います。
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