インドネシア人の特徴とは〜宗教事情や文化などから〜

インドネシアでは宗教が日々の生活に深く浸透しています。特にイスラム教の存在感は顕著で、礼拝の時間を知らせる「アザーン」の音が町中に響き渡る光景は一般的です。アザーンは特に朝早い時間に行われるため、この祈りの呼び声で一日が始まることも珍しくありません。インドネシアの宗教に根ざした文化や価値観は、その日常生活の中で随所に見られます。

◯インドネシアの言語環境

 インドネシアは名前の通り非常に多くの「ネシア=島々」で形成されており、東西の幅はアメリカ本土に匹敵するほど長く伸びています。その広い領土では500種類を超える言語が使われているとされています。一国あたりの言語数ではパプアニューギニアに次いで世界で二番目に多いのです。

 公用語は1928年に選ばれたインドネシア語になります。インドネシア語は、この領域で交易をしていた商人が使っていた海洋マレー語をベースとした、時制がなく文法も簡単な人造語です。インドネシア語はエスペラントのような言葉と言えるかもしれません。今ではインドネシアのどこへ行っても、インドネシア語さえ分かればコミュニケーションが問題なくできます。日本も標準語で問題なく会話ができますが、このような国は世界中では非常に少ないのです。

 インドネシア人はインドネシア語と地方語のバイリンガル生活が普通です。地元のコミュニティでは母語を使い、他の地域の人とはインドネシア語を使い、初めてインドネシアに来た外国人には英語を使います。多国語国家のインドネシアが国として成り立っているのは、インドネシア語のおかげと言えるかもしれません。

◯インドネシアの宗教的多様性と信仰への尊重

 インドネシアという国家をまとめている重要な要素がもう一つあります。それはパンチャシラ(建国五原則)と呼ばれるものの存在です。パンチャが「5」、シラが「原則」を表します。それらは、

 (1) 唯一神への信仰

 (2) 公正な人道主義

 (3)インドネシアの独立

 (4) 合議制と代議制に基づく民主主義

 (5) 全国民に対する社会的公正

という5つの原則で、国の独立を宣言した際に発布された1945年憲法の前文に記載されています。

 一番に挙げられている「唯一神への信仰」では、イスラム教、カトリック教、プロテスタント教、ヒンドゥー教、仏教、儒教の6つの宗教のいづれかを信じることが求められています。インドネシアは多宗教国家と言われる所以です。国民の約85%がイスラム教徒で、一国としては世界最大のイスラム人口を持つ国です。しかし、イスラム教は国教ではありません。

 ただし、宗教を信じるといっても人によって信仰の度合いは異なります。なかには「身分証明証イスラム」という形だけの人もいます。パンチャシラは学校の一教科として教えられ、子供たちはそれを暗記させられますが、パンチャシラの内容には厳密な規定などはありません。

 このようにイスラム教徒、キリスト教徒、仏教徒など、多様な宗教観を持つ人々が一緒に働いていますが、異なる宗教の信者同士でも、互いの信仰を尊重し合う文化が根付いています。例えば、イスラム教徒は1日に5回祈りを捧げます。仕事中にも祈りの時間が必要になりますが、多くのインドネシアの職場では就業時間中にイスラム教徒が祈りの時間を取ることが認められています。

◯インドネシアにおける飲食事情

 宗教的な背景からインドネシアは豚肉やお酒を避ける国というイメージがありますが、実際には個人の信仰や生活習慣によって異なります。確かに豚肉やお酒を扱わない店が多いですが、外国人が多く訪れる都市部のレストランではこれらがメニューにあることも珍しくありません。一般的に多くのインドネシア人は豚肉やお酒を避ける傾向にありますが、イスラム教徒であってもこれらを飲食する人は存在します。

◯宗教への取り組み方の多様性

 インドネシアでは、宗教への取り組み方は人それぞれです。ジャカルタなどの都市部では、ヒジャブ(頭や身体を覆う布)を着用する女性もいれば着用しない女性もいて、その割合はほぼ半々です。しかし、ジャカルタ以外の地域ではより敬虔な信者が多い傾向にありヒジャブを身に付ける女性を多く見かけます。

 世代によっても違いがあり、若い世代では親はヒジャブを着用していても、同姓代のほとんどの友人が着用しないので自分も着用しないという感覚を持っている場合が多いです。厳格な家庭では、家を出るまでは親に言われてジルバブを着用するが外に出たら外す若い人もいます。最近のインドネシアでは、ヒジャブを着用しない人もいればタトゥーを入れる人もいて、多様性が尊重される文化が根付き始めています。

◯インドネシア人の性格と特徴

 インドネシア人はおおらかで自由な時間感覚を持つ人が多いと思います。このため仕事上では期限や納期に対する感覚が日本とは異なり、しばしば納期が後ろ倒しになったり、念押しをしないと忘れられがちです。また、インドネシア人から具体的な期日を設定されることは稀で、期限を過ぎても罪悪感を感じることが少ないように感じます。

 一方で、インドネシア人は基本的に穏やかでスローペースな性格の人が多いため、怒鳴られたり叱られたりする経験があまりありません。そのため人前で注意されることに慣れていないのです。インドネシア人スタッフに注意する必要が生じた場合は、1対1の状況を作り別室で話をする、注意した理由と原因を明確にしてわかりやすい根拠を持って伝える、などを大切にしています。

◯各民族の特徴について   

 インドネシア国民の約4割を占めると言われているジャワ人のなかでも中部ジャワ~東ジャワのジャワ語ネイティブの民族は温厚で控えめな性格です。他人を優先し自分のことは後回しにしたり、遠慮がちな場面も多くみられます。他の民族に比べ、他者とのディスカッションの場で口論を避けることが多いように感じます。

 ジャワ人に次いで数が多いと言われるのがスンダ人です。スンダとはBogor, Bandung, Indramayu などの都市がある西ジャワのことを言います。一般に、明るく愛想がよく楽観的で丁寧な人柄といえます。ジャワ人が話すジャワ語も同様ですが、スンダ語にも共通する点は敬語の種類が複数あったり、丁寧に話す言語が発達した点に特徴があるようです。

 独自のイスラム法を持つ州で有名なアチェ州のアチェ人は、物ごとをはっきりと言い、感情の起伏が激しいと言われます。アチェと同じスマトラ島で北部に住むバタック人も感情の起伏が激しい方だと記事等では表現されています。スラウェシ島のマカッサル人は一般的に怒りやすい、否定されることを嫌う、すぐに血が上る、などと言われているようです。次にジャワ島の東端から少し離れたところにある島に住むマドゥラ人の性質は節約家で働きものと言われています。バリ人について思わず笑ってしまうようなことがある記事に書かれていました。それは喧嘩・権利の主張・怒ること、そういった類のこと全てを面倒に思う性格、というものです。これが当てはまる人も、そうでない人もいると思いますが、あのバリ島の雰囲気をイメージしてみると、そのような性格の描写も否定できないと感じてしまいます。

最後に、インドネシアの人々は概して穏やかな性格を持っています。彼らの日常生活には宗教が深く根付いており、この点で日本人の価値観と大きく異なります。インドネシアは多様な島や民族で構成されているため、一概にすべての人々を同じように説明することは難しいですが、インドネシアの人々との理解を深める一助になりましたら幸いです。

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